メンタルヘルスプラットフォームオンラインメンタルヘルスプラットフォーム(KOKOROBO-J)の開発と社会実装

研究目標(私たちの目指すもの)

私たちは、「一人ひとりのメンタル・ウェルビーイング」を育むことのできる社会を実現するため、我が国初の全世代型メンタルヘルスプラットフォーム(KOKOROBO-J)を開発し、効果検証を行い、日本全国で利用可能にします。

KOKOROBO-Jは、
(1)いつでもどこでも誰でもアクセス可能な全世代型メンタルヘルスチェックシステム(KOKOROBO)
(2)ユーザーコミュニケーションシステム、教員のサポートシステム、市民・患者参画システム
を備えたわが国初の全世代型オンラインメンタルヘルスプラットフォームです。

これにより、日常的にメンタルヘルスケアを行うことが当たり前の社会を実現し、個々のメンタル不調を予防し、メンタル不調を早期に手当てして、回復することで、「一人ひとりのメンタル・ウェルビーイング」を育むことのできる社会を実現します。

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター

研究代表機関:

国立研究開発法人
国立精神・神経医療研究センター

研究背景(なぜ研究するのか)

国立精神・神経医療研究センター 竹田和良

研究代表者

竹田和良

国立精神・神経医療研究センター
医師

はじめまして。研究代表者をしております国立精神・神経医療研究センターの竹田と申します。

皆様、「メンタルヘルス」と聞いて、どのようなイメージを持たれるでしょうか。以前に比べますと、メンタル不調やうつ病、不安障害などは、社会の中で認知が高まり、様々な情報が得られるようになりました。一方で、「メンタルヘルス」については、メンタル不調や精神疾患の予防といったイメージが強いのではないでしょうか。

世界保健機関(WHO)のメンタルヘルスの定義は、「人が考え、感じ、行動することと関係し、日常のストレスをやり過ごし、人と関わり、自分らしい選択をする「バランスのとれた状態」」となっています。つまり、病気の予防を意味するのみでなく、社会の中で、他者と関わりつつ、自分らしく生活できる能動的で意欲的な精神状態」を指します。WHOでは、このような状態を「メンタル・ウェルビーイング」の状態と説明しています。

一方で、次のような課題や調査結果が知られています。
・諸外国と比べ、我が国では種々のサービスが提供されていますが、メンタルヘルスサービスへのアクセスが十分でなく、必要な人に必要な情報が必要な時に容易に届かないことが課題とされています。
・こうした背景の中で、新型コロナ感染症が流行し、特に思春期で、うつ病、不安障害が増加し、2020年小中高生の自殺者も過去最大となり、その後も増加しています。
・ユニセフの調査では、我が国の子供の精神的幸福度(メンタル・ウェルビーイング)は、OECDに加盟する先進国の中で37/38番目と極めて低く、身体的幸福度がOECD加盟国中1位であるのと対照的であり、若い世代へのメンタルヘルス対応が不可欠となっています。
・加えて、イギリスの出生コホートでは、思春期の内発的価値(興味や関心に基づいた能動的な行動)の高さが、高齢期での主観的満足度(ウェルビーイング)の高さと関連し(J Positive Psychol,2020)、将来にも影響を及ぼすことことから、思春期のメンタルヘルスの重要性が増しています。

以上のことから、こどものときから、ライフコース(一生涯)で、一人ひとりの「メンタル・ウェルビーイング」を育む環境作り、システムが必要不可欠であると考えました。

そのためには、以下の2つが必要であると考えています。

1つ目は、(1)「誰もが生涯において、1度はメンタル不調を経験する」ことを広く皆様に知って頂くことです。
2つ目は、(1)を踏まえて、(2)「メンタルヘルスケアが当たり前の社会」を実現することです。

(1)誰もが生涯において、1度はメンタル不調を経験する
有名なニュージーランドの出生コホートであるダニーデンコホートでは、18歳までに59%が、45歳までに86%の方が、精神疾患の診断基準を満たすことを明らかにしています。他の疫学研究でも概ね同様の結果が報告されています。この結果は、人生の前半において、9割の方がメンタル不調を経験すること、一生涯で考えれば、誰もがメンタル不調を経験することを示しています。
自分は関係がないと感じることが多いかもしてれませんが、メンタル不調は、現実には、すべての人に生じるのです。
これが常識として個人、そして社会に浸透することが、必要不可欠だと感じています。

(2)「メンタルヘルスケアが当たり前の社会」の実現
(1)を常識として理解した上で、その対策として、子どもの時から、ライフコースで、メンタルヘルスケアを当たり前のこととして、日常的に実践することが重要と考えます。

以上、(1)(2)を実現するために私たちは、我が国初の全世代型メンタルヘルスプラットフォーム(KOKOROBO-J)を開発し、効果検証を行い、日本全国で利用可能にするため研究を開始しています。

研究内容(何を明らかにするか)

全世代型メンタルヘルスプラットフォーム(KOKOROBO-J)

我が国初の全世代型メンタルヘルスプラットフォーム(KOKOROBO-J)を開発し、効果検証を行い、日本全国で利用可能にします。

KOKOROBO-Jは、
(1)いつでもどこでも誰でもアクセス可能な全世代型メンタルヘルスチェックシステム(KOKOROBO)
(2)ユーザーコミュニケーションシステム、教員のサポートシステム、市民・患者参画システム
を備えたわが国初の全世代型オンラインメンタルヘルスプラットフォームです。

全世代型メンタルヘルスプラットフォーム(KOKOROBO-J)

(i) ユーザーコミュニケーションシステムをメインとして、これをサポートする形で、(ii)教員サポートシステム、(iii)患者・市民参画(PPI)システムがあり、それぞれのシステム開発を行います。 (i)は、新たなAIチャットボット、種々のセルフヘルプツールを開発し実装するとともに、相談・居場所ツール・システム等を提供します。(ii)では、教職員向けのメンタルヘルスサポート、小中高生へのメンタルヘルス教育サポート、また、好事例のデータベース化を行い、全国からアクセス可能とし、自治体単位の枠を超えた、教員及びスクールカウンセラーの交流・支援の場も提供します。(iii)では、当拠点の仲間として研究参加する、中高生チーム、市民チームを立ち上げ、ユーザーコミュニケーションシステムをサポートする、市民相談チームやメンタル不調経験者や精神疾患患者等によるピアサポーターによる相談チームを育成します。

現在、プラットフォームのうち、(1)いつでもどこでも誰でもアクセス可能な全世代型メンタルヘルスチェックシステム(KOKOROBO) の成人版を運用しつつ、中学生版の開発をすすめています。

メンタルヘルスチェックシステム(KOKOROBO)

世代毎に適切なメンタルセルフチェックを提供し、結果に応じて、推奨対処法を提供するオンラインメンタルヘルスケアシステムです。
小学生版(開発準備中)、中学生版(モデル地域にて検証中)、そして成人版(無料公開中)から構成され、適切なメンタルヘルスチェックが可能です。スマホやPCからいつでもアクセス可能で、年齢・性別などの基本情報と気分・不安・睡眠などの評価尺度によるセルフチェックを行い、メンタル健康度を判定し、必要に応じてメンタルヘルスの情報提供、SNS相談、電話相談、オンライン相談等の推奨対処法を提案して、利用者の皆様に選択実施いただけます。オンライン相談にて、相談員が必要と判断し、ユーザーが希望された場合、連携医療機関への受診のサポートを行うことも可能です。

詳しくは、「KOKOROBO成人版」をご覧下さい。